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農林水産技術会議

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若手農林水産研究者表彰

平成18年度(第2回)業績概要

ダイズ多糖類の分子構造の解析に基づく食品用機能性素材の開発

受賞者:中村 彰宏 氏 37歳

不二製油(株) フードサイエンス研究所 主事

略歴

平成6年広島大学生物圏科学研究科修士卒、同年不二製油(株)入社。農学博士

業績概要

主な業績

農産未利用資源に含まれる植物細胞壁を構成する多糖類は、安定剤・乳化剤・ゲル化剤といった食品の機能性素材として利用が可能である。これらの機能は分子構造と密接な関連があると考えられており、分子構造を改変することで新たな機能性素材の開発も可能になる。
本研究では、オカラ由来のダイズ多糖類(SSPS)を多糖類分解酵素で分解し、質量分析装置で網羅的に分析することによってSSPSの分子構造を解明した。さらに、動的光散乱測定装置で分析することで、ドリンクヨーグルトの安定剤及び食品香料の乳化剤として機能するSSPSの構造とメカニズムを解明した。この解析技術は、各種多糖類の構造と機能の解明にも有効であり、国内外で利用されるようになった。
本研究の結果、構造と機能が明確になったSSPSは、食品市場でのニーズが高まり、現在、ドリンクヨーグルト用安定剤として市場の約40%にまで広がり、年間2,000tを生産するに至っている。さらに、糖鎖を部分分解することで乳化活性が劇的に向上する事を見いだし、この知見に基づいて高乳化SSPSを完成した。上市初年の2004年には約10tが食品乳化剤として利用されている。
これらの研究成果は、日本各地の農産未利用資源の有効利用に繋がるとともに、構造と機能が明確で安全な食品素材を創出することで国民の安全で豊かな食生活の実現に寄与することが期待される。

研究内容・成果

主要論文・特許

「Study of the role of the carbohydrate and protein moieties of soy soluble polysaccharides in their emulsifying properties.」Journal of Agricultural and FoodChemistry. 52, 5506-5512 (2004)

「The stabilizing behavior of soybean soluble polysaccharide and pectin in acidifiedmilk beverages.」International Dairy Journal. 16, 361-369 (2006)

受賞評価のポイント

本研究業績は、食品の分散安定剤等に利用されているダイズ多糖類(SSPS)について、乳化、分散安定のメカニズムを分子構造レベルで解析する技術を開発するとともに、その技術を用いてオカラ由来の新たなSSPSの開発・商品化を行うなど実用性の高い成果を上げており、評価できる。本成果は、農産未利用資源を有効利用した新たな機能性食品素材の開発への活用が期待される。

連絡先

不二製油(株) フードサイエンス研究所

〒300-2497 茨城県つくばみらい市絹の台4-3

TEL: 0297-52-6324

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622