硬質小麦タマイズミの縞萎縮病と穂発芽抵抗性を強化した「スーパータマイズミ」の開発

1 研究の目的・終了時達成目標

「タマイズミ」は国産唯一の白粒硬質小麦品種で、中華麺および醤油醸造用として品質が優れているが、縞萎縮病の被害が大きく、収穫期の雨害により穂発芽しやすい。このため、DNAマーカー選抜法を用いて縞萎縮病と穂発芽抵抗性を強化した「スーパータマイズミ」を品種化する。研究終了時に栃木県、三重県で10ha以上の作付けを目標とし、将来的に2,000haの作付を目指す。

2 研究の主要な成果

（1） コムギ縞萎縮病抵抗性「中」から「強」に強化された「タマイズミR」を品種化し、縞萎縮病発生圃場で収量の向上を確認した。穂発芽抵抗性については、穂発芽程度がやや改善されたものの明らかな強化には至らなかった。

（2） 「タマイズミR」は、中華麺、醤油醸造において「タマイズミ」と同等以上の評価を得た。

（3） 栃木県、三重県で収量と品質を確保するための生育指標を明確にし、「栽培マニュアル」を作成した。

（4）三重県で奨励品種に採用し、産地品種銘柄を「タマイズミ群」で申請した。

公表した主な特許・品種・論文

（1） 品種登録出願第31563号 小麦品種「タマイズミR」を品種登録出願（H29年11月） （出願者名：農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター）

3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

（1）三重県で奨励品種に採用し、麦類では全国で初めての品種群として産地品種銘柄に申請した。平成31年播きの品種転換に向けて実証ほの設置、種子の増殖を行い迅速な普及に努める。

（2）コムギ縞萎縮抵抗性が強化されたことで、県内の硬質小麦生産地帯へ波及し、生産ロットが増え、安定供給することでタマイズミ関連商品の開発の活性化を目指す。

【今後の開発・普及目標】

（1） 2年後（2019年度）は、三重県内のタマイズミがタマイズミRに品種転換(2019年播き)

（2） 5年後（2022年度）は、三重県内での生産量が現状の800tから2,000tに向上し、栃木県でもタマイズミRに品種転換

（3） 最終的には、2県合わせて2,000haの作付を目指し、安定供給が実現することによりタマイズミRの特性を生かした小麦加工食品が開発される。

4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

（1） 導入が見込まれる三重県内の生産者の単収向上による増収効果が約2億円、安定供給が実現されることにより小麦加工食品の開発による増収が2億2千万円期待できる。

（2） 本研究の成果を活用した白粒硬質小麦が増産され、中華麺や醤油等の加工食品が開発されることによって、今後、国民の国産を指向した豊かな食生活の提供に貢献が期待できる。

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