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農林水産技術会議

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令和4年度第9回農林水産技術会議の概要

1.日時

令和5年2月28日(火曜日)14時00分~15時45分

2.場所

農林水産技術会議委員室及びオンライン開催

3.出席者

【農林水産技術会議】
小林会長、北岡委員、小松委員、瀧澤委員、内藤委員、二宮委員
【農林水産技術会議事務局】
川合局長、山田研究総務官、中澤研究総務官 他
【国立研究開発法人】
中谷農研機構副理事長、小山国際農研理事長

4.議題

(1)スマートフードチェーンの稼働について
(2)スマート農業実証プロジェクトの成果について

5.概要

(1)スマートフードチェーンの稼働について
事務局から、スマートフードチェーンの稼働について説明した。これに対し、委員から以下の意見があった。

1)今後、どのように社会実装していくのかが重要。

2)スマートフードチェーンは省庁横断で進める必要があり、また、品種ごとに扱いが異なるため、様々な課題があるかと思う。

3)大企業ではデータの利活用が進んでいるが、中小企業ではそこまで進んでいない場合もあり、システムを使えない人にどう使ってもらうのかという視点が必要。「Chat GPT」が最近注目されているが、このような新しい技術を活用し、いかに参入障壁を下げていくか工夫していく必要。

4)生産・加工・流通・消費まで一気通貫で行う企業も相当数出てきており、スマートチェーンのデータベース化に当たっては、このような企業が何に困っているのかを把握すべきと感じた。

5)実証実験は、経済合理性にかなった活動が先行して行われている印象を受ける。みどりの食料システム戦略が提唱している資源循環や環境負荷低減の視点も非常に重要であり、今後どのように訴求し、実際にシステムとして繋げていくのかも考えていく必要があるのではないか。

6)SDGsやみどりの食料システム戦略との関係で、ukabisにどのような情報を与えていくのかが重要な視点の一つ。政策的に与えたい情報を、システムの中に盛り込んでいくことはとても大事。

7)他方、消費者がどのような情報を求めているのか、きちんと把握し情報提供する仕組にすることも重要。ukabisの情報を利用する人たちが、何を求めて、いつ、どう利用するかということをしっかり考えていく必要があるのではないか。

8)専門家によれば、鮮度のモニタリングは非常に難しく、出荷前に破棄される量が相当あるとのこと。一番美味しい時期はいつなのか、それをどのように見極めどのように消費者に届けるか、科学的に研究を進める必要があるのではないか。

9)輸出においても、日本産品の品質管理に関する情報をしっかり蓄積していくことが重要であり、同時に、それが産地偽装に対する抑制的な働きを示すようなつながりが持たれると、スマートフードチェーンというシステムが生きてくると思う。

10)スマート・オコメ・チェーンについて、コンソーシアムを設立し活動が始められたとのことであり、これをきっかけに日本での米の消費量が復活することを期待したい。

11)卸・精米の段階で、「GABA」や「γオリザノール」といった機能性成分に関する情報が表示されるようだが、玄米の機能性を示すのであれば、玄米の調理法などの情報もあわせて提供できると良いのではないか。

12)様々なシステムとかが開発されているが、使いこなせなければ意味がない。専門的な人材の育成・配置、基礎的なリテラシーとして多くの人に知識を持ってもらうなどの対応が必要。

(2)スマート農業実証プロジェクトの成果について
事務局からスマート農業実証プロジェクトの成果について説明し、農研機構から情報発信の取組状況について説明した。これに対し、委員から以下の意見があった。

1)国全体として、キャベツや大根など品目ごとに、例えば10年後にどのくらいの生産量を目指す姿があって、そこからバックキャストして、スマート農業をどの程度普及させる必要があるのか、全てKPIとして示す必要があると感じている。こういった分析・目標がないと、普及するかしないのか、誰が何をするのかよくわからなくなってしまう。

2)4年間の実証結果を踏まえ、国策として何をどうするのか。どの分野にどうお金をつけていくのかが非常に重要であると考える。

3)スマート農業の効果として、作業の自動化、情報共有の簡易化、データの活用が示されているが、特に、データの活用について、暗黙知であったものをデータ化し次の世代で活用が可能になることは大きなメリットであり、もっと強調して説明すべき。

4)世界的にみると、アジアの65歳以上の高齢化率は突出しており、外国人労働者に期待するのは難しくなってくると考えられ、その意味でもスマート農業の推進は重要。

5)スマート農業によって、地球温暖化にどれだけ貢献するのか、食料自給率にどれだけ貢献するのか、健康長寿にどれだけ貢献するのかという情報が一般国民には必要。生産性の向上や農家の所得向上と言っても国民にはあまり身近に感じないのではないか。

6)インスタグラムを見ると、「スマート農業」というタグだけで1.8万件もヒットする。写真などが全国からどんどん投稿されており、スマート農業に対する期待が非常に高まっていると感じる。必要な人たちに必要な情報が届くよう、引き続き工夫していただきたい。

7)エネルギー需要の関係では、水素と二酸化炭素は奪い合いになりつつある。その中で、スマート農業推進の必要性を考えたときに、例えば、スマート農業がなければ日本からキャベツがなくなってしまうという危機感を示すことができれば、スマート農業が必要だという国民全体の動きが出てくるのではないか。

8)農研機構のHPに実証事業の個別地区の成果を詳細に掲載いただいており、収量コンバイン導入による効果に非常に驚いた。農家によって営農形態が異なるので、個別具体の実証成果は非常に有用であり、地域の協議会での議論等においても参考になる。

9)ライフサイクルアセスメントの考えも重要。具体的に言えば、部分施肥、可変施肥、防除により環境負荷をどの程度減らすことができたのか等、みどりの食料システム戦略に貢献する部分についても、それぞれの事例でうまく説明できるようになると良いのではないか。

10)スマートサポートチームの在り方について、導入支援の部分が特に重要と考える。「Chat GPT」を活用した導入支援も検討いただきたい。

11)果樹・茶に関する技術で、薬液が葉裏にも届くドローン農薬散布の実現は難しいと思う。むしろ、ドローンで園地監視をし、その情報に基づき自動走行ロボットを使うなど、2段構え3段構えでドローンを活用してはどうか。

(農研機構からの補足説明)
12)農研機構から、

  • 水素を活用した電動トラクターや農業機械の電動化は、実証段階に入るには早過ぎる。人口減少の中で食料安保を確保していくには、スマート農業が必須だと考えている。
  • 成果が出ている地区を分析すると、スマート農業による省力技術・省力効果を規模拡大に確実につなげ、機械の減価償却費の増加をカバーすることで増益に結びつけたというパターンが典型的。その他、データを活用することで、いわゆる精密農業、栽培管理を精緻化し、人の投入を追加せずに増収、品質向上に結びつけた例もあり、典型的な成功パターンを提案していきたい。
  • 導入支援について、これまでの実証事業を通じ、多くの知見が積み上がってきており、ポイントとなる経営指標やスマート農業の技術指標のようなものをまとめつつある。これをベースにしたコンサルティングを行うソフトウエアの開発も進めており、情報発信とあわせて導入支援に活かしていきたい。
  • ドローンの活用について、低コストでの防除の実現には、樹形を変えるなど植物側からの歩み寄りも重要。収穫用の自動走行するロボット台車があり、それに防除のアタッチメントをけるなど、様々な開発を進めているところ、など補足説明があった。

以上

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課総括班

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399