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農林水産技術会議

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令和4年度第1回農林水産技術会議の概要

1.日時

  令和4年4月26日(火曜日)14時00分~15時55分

2.場所

  農林水産技術会議委員室及びオンライン開催

3.出席者

【農林水産技術会議】
小林会長、北岡委員、小松委員、内藤委員、二宮委員、松田委員

【農林水産技術会議事務局】
青山技術総括審議官兼農林水産技術会議事務局長、山田研究総務官、山口研究総務官 他

【国立研究開発法人】
門脇農研機構理事、小山国際農研理事長

4.議事

(1)令和4年度農林水産技術会議の運営方針及び日程(案)について
(2)農林水産研究イノベーション戦略2022について
 (3月会議での指摘事項に対する回答)
(3)新品種開発プロジェクト(令和2年度補正)について
 (3月会議での指摘事項に対する回答)
(4)みどりの品種開発取組方針(仮称)について
 (基本的な検討方向・スケジュール等)
(5)委員からの情報提供(北岡委員)

5.概要

(1)令和4年度農林水産技術会議の運営方針及び日程(案)について
・事務局から、令和4年度農林水産技術会議の運営方針及び日程(案)について説明した。これに対し、委員から以下の意見があった。
1)世の中が激しく動く時代の農林水産業の研究の在り方は変わると思っており、そのスピード感に応じて、オンライン会議も組み合わせて、フレキシブルに運用していただければと思う。
2)食料は我々が生きていくうえで重要であり、そこに農林水産業がどう絡んでいくかという視点で今後も議論できればと考えている。
3)ウクライナ情勢等を背景に、食料自給率や食料安保などの問題がクローズアップされるなど、かつてない速さで政府の政策やそれに応じた技術対策が求められてきている中、技術会議としても非常に難しい判断が求められるところ、重要な課題に今後も対応していきたい。

(2)農林水産研究イノベーション戦略2022について(3月会議での指摘事項に対する回答)
・事務局から、3月会議(令和3年度第10回会議)での指摘事項について回答した。これに対し、委員から以下の意見があった。
1)「持続可能で健康な食」について、健康な食という考えは全世界的な流れであり、そこに「持続可能」という形容詞がついていることが非常に重要と考える。これまで言われてきたバランスの取れた食事と一線を画する、非常に興味深いテーマだと思っている。まずはいろいろな専門家の意見を聞きながら方向性を考えていきたいと思う。積極的に関わっていきたい。
2)「持続可能で健康な食」検討委員会では、食材を供給する立場の農水省ならではの視点を大切にするとともに、発展性のある内容となることを期待。 10年ほど前に、かつてアメリカを参考に作った産総研やNIMS (物質・材料研究機構)の体制が、新しいイノベーションを作るには時代遅れの組織体系になっているのではないかというような議論があった。戦後の国内農業は農協、公的研究機関が支えてきたと認識。農業を取り巻く情勢が大きく変わる中、これらの組織が農業の抱える課題を解決していくのにフィットしているのか。農業分野の技術戦略についても、コメ・麦・大豆と果物では全く考え方が違うと思う。個別品目ごとに全体像を見る必要。

(3)新品種開発プロジェクト(令和2年度補正)について(3月会議での指摘事項に対する回答)
・事務局から、3月会議(令和3年度第10回会議)での指摘事項について回答した。これに対し、委員から以下の意見があった。
1)国際特許について、積極的に対応すべきと考える。民間では、まず出願し、次に自分達の技術を売り込んでいくという取組をしている。ネクタリンのようなモモが日本に輸入される時代。軟化制御・鮮度保持技術はもっと世界で幅広く使われ得る技術だと思うので、技術の内容をよく吟味し、より積極的な知財活用をして欲しい。
2)生産者の所得向上は重要であるが、輸送に係る環境への影響にも配慮すれば消費者理解も進むのではないか。
3)大豆について、日本の収量が低いのは湿害の問題等が要因と聞いたが、植物由来タンパク源として、日本人の健康を考えると、大豆は非常に重要な食材。今はどこのホテルでもプラントベースのハンバーガーを置いており、我々が思っている以上に、プラントベースの食品が出回っている。プラントベースタンパク源を使うという流れは加速していくと思われ、おからのような搾りかすを有効に活用することも含め、持続性のある食生活実現のために、国産大豆の増産は必要であると考える。
4)大豆の国内収量がそもそも低いので、グラム当たりのタンパク質生産は肉より効率的といっても、生産は広がらない。収量向上が重要。
5)2010年ごろに、経産省において日本の産業界の研究開発体制について議論し、それがSIPにつながった。例えば今議論されている大豆について、アメリカやEUでは、国と産業界と国研がどういう金の流れの中で研究開発を行っているのか。日本国内で同様のレポートとしてまとめられていないのか。
6)大豆の生産について、収量を増やすには育種だけで解決する問題ではなく、気候や栽培等々の条件が絡んでくる。議論に当たっては、育種の他、生産・流通・消費をとりまく状況がどうなっているのか、これをまず整理する必要がある。その上で、品種開発がどういう機能、役割を持つのかという説明も必要。
7)(4)みどりの品種開発取組方針にも関連するが、主要品目ごとに外国の現状、国内の体制、育種体制を含めた紹介があれば、理解が進む。

(4)みどりの品種開発取組方針(仮称)について
・事務局から、みどりの品種開発取組方針(仮称)について説明した。これに対し、委員から以下の意見があった。
1)基本方針の必要性は理解するが、具体的に何を目指しているのかが不明確。すでに農研機構や公設試には様々な人材がおり、品種開発が進められ、成果も出している。現状がどうなっていて何を目指すのか、一般の人が理解できるよう組立ててほしい。
2)対象品種をどう決めていくか、また年限短縮や育種デザインなどデータ駆動型を進めるにはどうするか。育種目標の設定が重要であり、これまでの実需者からの要望だけではなく、(みどり戦略KPIに貢献する)持続性の要素や窒素利用効率向上などの基礎的な要素も入れていく。そうでなければスマート育種基盤のようなプラットフォームがあっても意味がない。
3)みどり戦略において、KPIとして有機農業、化学肥料の使用量減を推進していくとしているが、2030、2050年に向けて具体的にどのような技術を使って目標達成を目指すのか。育種でいえば、これまでと同じペースでやったら2030年には間に合わないので、例えばゲノム編集など新たな技術開発が必要になるということではないか。従来の伝統的研究とは違う体制で、違うスピード感で進めていく必要があるということを説明していく必要がある。
4)収量向上には多数の遺伝子が関与している。これまでは選抜したものを収穫まで栽培しなくてはならなかったが、収量性が苗段階で分かるようになることは重要。
5)ゲノム編集技術は本基本方針においてどの程度ウエイトがおかれるのか。海外のゲノム編集の研究者は創薬の方に目が向いており、そういった人たちをどこまで巻き込むのか。開発した人たちにメリットが出るように、知的財産は非常に重要だと思っている。
6)種苗法改正により育成権者は栽培地制限ができるようになった。地方自治体が育成権を有する公設試育成品種の利用が強く制限されてしまうことを懸念する。優秀な品種が自治体を越えて広く普及できるよう、自治体行政関係者の知財活用への理解が必要。
7)検討材料としてきゅう肥作物や内水面作物からの窒素やリン酸の回収を助ける藻類とか、水生植物といった今まで化学肥料が潤沢に供給されることを前提としたあまり顧みられることのなかった分野の育種が、資源循環の観点からも重要になるのではないか。
(研究機関からの意見)
8)農研機構から、
・農業研究に求められるのは社会問題の解決であり、そこからのバックキャストで、どのようなアプローチを選択すれば一番効率的でインパクトが大きいのかを考えることが重要である。
・ゲノム編集については、農研機構でもしっかり取り組んでいる。世界的にもCRISPR-Cas9のアプリケーションとして最も速く実効性が出てくるのは、農林水産分野であるというのが大きな流れであり、農研機構としても、基盤研究だけでなく、アプリケーション開発に向けた研究にも取り組んでいる。
・ゲノム編集はあくまでたくさんあるツールのひとつで、従来型の手法でできることはどんどん進め、ゲノム編集でしかできないものをしっかりやって行く、などの意見があった。
9)国際農研から、
・育種というと、長期的な見通し、方針が重要で、おそらく農業政策の5年計画の方針のもとで進める必要がある。一番大事なのは人材であり、どういう人材をどのセクターが育てるのか、公設試がどういう人材を育てるのか、国研がどういう人材を育てるのか、オールジャパンで育種基盤を進めていく必要があると思う、などの意見があった。

(5)委員からの情報提供(北岡委員)
・北岡委員より、「国家プロジェクトの意義」と題して、総合科学技術・イノベーション会議、NEDO技術戦略研究センター、官民イノベーションファンド、大阪大学の取組事例等について情報提供があった。これに対し、以下の質疑があった。
1)産学連携等々の様々な研究体制づくりに関わってきたとのことだが、研究機関、国、民間、ベンチャー等、どのような立場で参画してくるのか、募集はどういった形で行うのか。
→成果を社会実装までつなげるには、テーマ設定、それをプロデュースするプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーがお互いのモチベーションを維持しながら進めることが重要。やはり、CEOの能力、社会実装に向けた活動と大学の基礎研究をどうマネジメントするかが重要。
2)大学の強みを生かした人材・資金の好循環の実現は、素晴らしい取組。研究者は、世界の研究に対して自分の立ち位置はここで、そこに追いつくためにこれをしなければいけない、だから研究予算必要、という話に終始しがちであるが、これをバックキャストの発想に変えていく際のポイントがあれば教えてほしい。
→大阪大学には、ベンチャーを作ることに対して抵抗感がないという風土があった。教授や研究者が基礎研究をやり、これとは別に、常に社会課題に目を向ける人が必要で、ペアリングが重要であると考える。研究者だけ、実用開発する人だけというのではなく、ペアリングをうまくして、チームとして機能することが重要。
3)この技術会議での議論で、産業界の話と農業界の話で最も違うところ、違うと感じるところはどのようなところか。
→世界にも目を向ける必要があるというか、それが国内の農林水産業を守るという意味と、世界と戦うという二面性をどうするのかというのが、農林水産行政の難しさと感じている。
4)農林水産業は他産業に比べると、いわゆる出口戦略づくり、バックキャストして何が必要なのか、全体として一つストーリーがきちんとできているかなど、改善点があると感じている。
→バックキャストというか、5年後に何を実現したいのか、何を得たいのかをしっかり意識、議論していく必要があるのではないか。


以上


お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課総括班

代表:03-3502-8111(内線5810)
ダイヤルイン:03-3502-7399