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明治150 年特別トークセッション「明治期の肉食文化からIT × 畜産技術がつなぐ未来を語る80 分!」

明治150年ロゴ

明治150 年特別トークセッション
明治期の肉食文化からIT ☓ 畜産技術がつなぐ未来を語る80分!


会場: 東京・大手町 3×3 Lab Future サロン

平成30年7月3日(火曜日)、農林水産技術会議事務局が主催する明治150年特別トークセッション「明治期の肉食文化からIT×畜産技術がつなぐ未来を語る80分!」が開催されました。

別所智博事務局長からのご挨拶に続き、ゲストにお招きした東京家政学院大学名誉教授・江原絢子氏と株式会社ファームノートホールディングス代表取締役・小林晋也氏によるミニ講演が行われました。さらに、ショートショート作家・田丸雅智氏をモデレーターに迎えてゲスト2名とのトークセッションも実施。IT導入により未来の食文化がどう変わるのかなど、今後の農畜産業のありかたを見つめる話に、来場者の方々も興味深く耳を傾けていました。

食の歴史から紐解く、スマート農業がつくる未来とは?

‹主催者挨拶›スマート農業の推進について

農林水産技術会議事務局長別所 智博

日本の人口は減少時代に入り、市場が縮小してきている一方で、世界は大きな人口増加を迎えています。途上国における食文化の変化というのは、わが国の品質の高い農林水産物の新しい需要フロンティアを創出していく上で、期待が寄せられています。

そういった発展を目指す時に必要となるのは、先端技術と匠の技の融合。私たちはそれを「スマート農業」と名付けて取り組んでいます。

農業現場にICTを幅広く導入し、生産に関わる情報をビックデータ化することによって、栽培管理などを最適化していくことができますし、熟練したノウハウを形式知化していくことで、後継者の育成に役立てていくことも可能です。また、ロボティクスによって実作業の省力化、無人化も実現されていきます。

農林水産省の使命は、命を支える食と安心して暮らせる環境を未来の子どもたちに継承していくこと。農林水産業に携わる方々が安定して食料供給を行うために、持続的に経営発展していくことが必要です。スマート農業というのは、そうした未来を実現する、あるいは維持していく上でひとつの大きなツールになるものと考えています。

(要旨抜粋)

‹ゲスト講演›日本における肉食の文化 ~明治期以降を中心に

東京家政学院大学名誉教授江原 絢子 氏

日本人の生活と肉食文化の関係を見ると、1643年に出版された江戸時代の料理書に猪や鹿など獣肉の調理法が載っており、この頃までには肉食が公に食べられていたことがわかります。その後、肉食がタブー視されるようになっても、猪などの野獣類は「山鯨」などの名前に変えて食べ続けられており、彦根藩では牛肉を薬として味噌漬けにし、将軍家や大名に贈っています。

やがて開港されると、居留地の外国人を通じて肉食に接する機会が増え、明治に入ると「西洋料理は体を作り富国強兵につながる」ということで奨励されました。東京を中心に牛鍋が流行したのもこの頃です。さらに日露戦争期には、軍隊に牛肉の缶詰を供給する影響で牛肉が不足すると、豚肉を食するようになりました。しかし、こうした肉食文化の変遷は外食を中心としています。

肉食が家庭に採り入れられて“日常の食”が変わってきたのは、産業革命期と言われる明治30年代(1900年代)以降です。織物業の伸長と共に養蚕業が発達すると、ひえや粟の畑は蚕の餌である桑の畑へと転換され、雑穀食が減少していきます。また同じ頃から、女子に対する食物教育が整備されたことで家庭にも肉食が少しずつ浸透していき、家庭向けの料理書や雑誌なども、その普及を後押しすることになりました。

ただ、これらは都会を中心とした動きであり、肉食が地方にも浸透していくのは第二次世界大戦後のことです。昭和初期、地方では肉を食べない、嫌いという人がまだ多くいましたが、1960年以降には肉の供給量が急増します。また、75年から80年にかけては食の洋風化が進みますが、統計的にみると、魚を食べてきた日本人が、魚より肉を多く食べるようになるのは、2005年以降のことです。

このように、肉食の文化が全国に定着するまでには、非常に長い時間が掛かっているのです。

(要旨抜粋)

ファームノートの挑戦Internet of Animals が拓く未来の農業

(株)ファームノートホールディングス 代表取締役 小林 晋也 氏

私はもともとITの会社を起業してやっていましたが、たまたま酪農家さんからの問い合わせをきっかけにいろいろ調べてみたら、今の農業というのは非常に効率が悪くて、このままでは持続可能ではないことに気づきました。そこで私たちは、持続可能な農業を実現するために「世界の農業の頭脳を創る」ということをテーマとして、酪農や畜産、特に牛に特化した事業に取り組んでいます。

そのひとつがスマホで牛を管理するサービス。乳牛の場合、分娩間隔が搾乳に大きく関わってくるので発情期の管理をしたり、種付けや妊娠鑑定の担当者データ、餌や糧食と体重を関連付けたデータの管理、生産性の悪い牛の抽出、さらには記入に手間が掛かる受精証明書や、経営に関わるレポートも簡単に作成できます。今まで事務所の台帳で確認していたデータを、牛の目の前で見られるということでとても好評です。小規模農家さん向けには、LINEを使うぐらい簡単に管理ができるアプリも提供しています。

また、牛の行動をインターネットを通じて把握するためのセンサーも提供しています。牛の動きや食事、反すう、休憩などを分析して、健康状態の把握や発情行動を見つけたらスマホに通知するというものです。

さらに私たちは単純労働を減らし、人間にしかできないことに集中するために、弊社のサービスであったり、IoT・人工知能などを活用した先進技術をもっと使いましょうということを提唱しています。お客様と共に、人工知能を使ってこれまでの農業のあり方を壊し、攻める農業にしようと…。これが「頭脳を創ろう」ということの一つであり、その提供を通じてより生産性が高まり、農業がもっと良くなっていけばという思いでやっています。

(要旨抜粋)

これからの食文化はどう変わっていくのか

モデレーター: ショートショート作家田丸雅智 氏ゲスト: 江原 絢子 氏 /小林晋也 氏


小林 晋也氏
1979年生まれ。北海道帯広市出身。旭川工業高等専門学校卒、機械工学専攻。機械部品商社に入社し、FA(ファクトリーオートメーション)分野で精密機械の拡販を担当。2004年帯広市に有限会社スカイアークシステム(現:株式会社スカイアーク)を創業。大手企業へのCMS・ブログシステム・社内SNSの普及に貢献。2013年に「世界の農業の頭脳を創る」という想いから株式会社ファームノートを創業。2016年日経ビジネス「次代を創る100人」に選出。
「生産者のITリテラシー向上は新しいアイデアを生み、
農業の成長にもつながっていくものです。」


食生活の変化は、情報流通の速度がより速くなっている今、人それぞれの価値観の変化によって決まってくると思います。例えば「肉を食べたい」という文化が数十年後には全く変わってしまうことも十分にあるでしょうし、「人工肉を食べる」という情報が大量に流れると、その価値観に反応するスピードが加速する可能性も高いですね。

一方、人工知能など新しい技術に触れることで、生産者の皆様のITリテラシーが上がっていると実感しています。生産者視点から新しいアイデアも生まれてきますし、それは未来に選択肢を広げることにもなります。最先端の技術により問題解決が図れれば、農業に携わる方々がより豊かになるスピードも上がるんじゃないでしょうか。

(要旨抜粋)


江原 絢子氏
お茶の水女子大学家政部食物学科卒業。博士(教育学・名古屋大学)。東京家政学院大学教授を経て、現在、同大学名誉教授・客員教授。一般社団法人和食文化国民会議顧問。専門は、食文化史・食教育史・調理学。主な著書は、『家庭料理の近代』(単著)、『日本の食文化』、『和食と食育』、『食と教育』(編著)、『おいしい江戸ごはん』、『和食とは何か』、『日本食物史』、『近代料理書の世界』(共著)、『日本の食文化史年表』(共編)など。
「人々の知恵は、いろんな経験をすることで
育まれていく。それは昔も今も変わりません。」


歴史的に見ると、各時代において農業や生産に対して知恵を出し合って生まれたアイデアというのが必ずあります。例えば、生産技術が向上していった江戸時代には、お米の白米化が進む中で発生したぬかを土壌改良に役立てたり、菜種油の絞りかすを肥料にしたり…。また道具や品種の改良も行うなど、新たな発想が積み重なって今に続いてきています。

現代においてもITという手法が異なるだけで、人が様々な知恵を出し合って発展させるという点では変わっていません。ただ、それを持続できるようにすることが大切で、次世代の人たちのために「今やることは何か」を考えることが必要だと思います。

(要旨抜粋)


田丸 雅智 氏
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。新世代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、「ショートショート大賞」を自らが発起人となり設立。全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。2017年には400字ショートショートの投稿サイト「ショートショートガーデン」を立ち上げ、さらなる普及に努めている。
「ITによる農業家の人々の進化が、
次世代の食文化を生み出すのかもしれない。」


ゲストのお二人のお話を伺っていて、明治後半に起きた産業革命を期に日本人の食文化が変化してきたように、ITの進化による情報革命が進む中で、同じように食生活自体が変わっていくのではないかと感じました。

農業に携わる人たちの基礎力が高まり、クリエイティブな作業にもっと関われるようになれば、生産者の方々からも新しい取組へのアイデアが生まれ、それが次世代の食文化につながっていくのではないでしょうか。

(要旨抜粋)

お問合せ先

農林水産技術会議事務局研究調整課

ダイヤルイン:03-3502-7399
FAX番号:03-5511-8622