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農林水産技術会議

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イオン液体による革新的バイオリファイナリーシステムの創出

年度
2017
ステージ
シーズ創出
分野
エネルギー(バイオマス)
適応地域
全国
キーワード
スギ、セルロース、イオン液体、減容化、迅速定量分析
課題番号
26052A
研究グループ
東京農工大学工学研究院、京都府立大学生命環境科学研究科、森林総合研究所
研究総括者
東京農工大学 大野 弘幸
研究タイプ
一般型 Aタイプ
研究期間
平成26年~28年(3年間)
PDF版
イオン液体による革新的バイオリファイナリーシステムの創出(PDF : 1547.8KB)

1 研究の背景・目的・成果

バイオマスは天然高分子の複雑な集合体であり、様々な有用物質への変換が期待されているものの、成分の分離は容易ではない。これまでに酸・塩基などの分子性液体を基礎とする反応媒体が溶媒として検討されてきたが、未だに効率的な分離技術は確立されていない。一方でイオン液体はイオンだけからなる液体であり、従来の分子性液体に比べはるかに多様な構造の設計が可能である。我々は世界に先駆けて、全く加熱することなく、スギに代表される未利用資源からバイオマスを効率的に可溶化するために有力なセルロース可溶化溶媒としてイオン液体の設計に成功した。加えて、水が混在した場合でもセルロースを可溶化できるイオン液体の開発にも成功した。そこで、本研究ではイオン液体を用いた、含水状態のバイオマスを低エネルギー処理し有効活用することを目的として一連の研究を行った。

2 研究の内容・主要な成果

(1) 植物バイオマスの処理に求められるイオン液体の物理化学的性質の特定。

(2) イオン液体の分子設計・合成とデータベース化。

(3) バイオマス減容化のための細胞壁分解挙動の解明。

(4) 各種イオン液体中におけるバイオマスの分解反応挙動および有用化合物生成挙動の解明。

(5) ターゲットプロダクツ生産技術の確立とリファイナリーシステムの基盤構築。

(6) バイオマスの構造や分解性が迅速分析に及ぼす影響の解明。

(7) 迅速定量分析のプロトコルの開発と評価。

【公表した主な特許・論文】

(1) H. Ohno et.al. “Maintenance-free cellulose solvents based on onium hydroxides”, ACS Sus. Chem. Eng., 3(8), 1771-1776, 2015.

(2) H. Miyafuji et.al. “Effect of ionic liquid treatment on the ultrastructural and topochemical features of compression wood in Japanese cedar (Cryptomeria japonica)”, Scientific Reports, 6, 30147, 2016.

(3) T. Yamada et.al. “A Simple Method for Separating Lignin and Carbohydrates from Softwood Biomass in a Glass Tube using Tetra-n-Butylphosphonium Hydroxide”, Bioresources, 11(1), 839-849, 2016.

3 開発した成果の展開方向

(1) バイオマス溶解に有用なイオン液体のデータベースを世界で初めて構築した。

(2) 開発したデータベースをもとに、従来の定量方法に比べ圧倒的な優位性を持つ分析方法を確立した。

(3) 有用フラン化合物を連続的に製造するシステムを発明した。

【開発目標】

(1) 2017年は、2~3kg程度の木材を処理し、200~300gの化成品(フラン化合物)を生産。

(2) 3~5年後には、300kg(1m3程度)程度の木材を一度に処理し、20~30kgの化成品を生産。

(3) 将来的には、合計2,000万m3の林地残材を処理可能なバイオマスプラントを稼働させる。

4 開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

この技術は国内農林水産地域に食糧生産のみでなく、化石資源に代替する有用資源の産出という新たな価値を付与するものであり、農山村の活性化に貢献すると共に、資源の自給率向上の点においても大いに貢献するものとなる。

この研究成果を活用しませんか?

この研究に関するご相談や質問等は、以下よりお問い合わせいただけます。

東京農工大学

大野弘幸
TEL042-388-7024

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